きっとこのシャツのようなコートは、「なんで今思い出したんだろう?」と思うくらい、不意に記憶によみがえる存在になるのだろう。表地はパンツと同じLYLIA社のSHARKSKINでしっかりとハリがあり裏地はとても暖かそうな生地で、ジャケットの上にシャツ、シャツの上にシャツ。羽織ったりボタンを留めたり、合わせ方ひとつで印象も気分も変わっていく。永遠に読み終わらない小説のように、何度でも新しい表情を見せてくれる存在。誰かにとって、そんな一着になればと思う。この写真を撮る前、試着しながらあれこれ組み合わせを考える時間が本当に楽しかった。その楽しさは、きっと私たちだけの楽しさではないはず。
コットンジャージニータックパンツと同じヘヴィ天竺で作られたG8デザインのジャケット。総裏なのでアウターとしての役割もしっかり果たし空気を含んだような少し丸みを帯びたシルエットです。どこに行くにもサッと羽織れる気軽さがあります。着用と洗濯によって少しずつ色落ちしていきます。経年変化も存分に楽しめるコットンジャージG8ジャケット。
膝にタックを加え、ミリタリーパンツの要素をデザインに落とし込んでいます。ドライな空紡糸で折り上げたジャージー。スウェットパンツのようなニュアンスですが、そのタックが入ることでラフになり過ぎない気がして良いなと思いました。自宅でも外出先でも、穿き心地が良い軍パンです。少し洗いを掛けて褐色させてあります。初めから少し小慣れた雰囲気で着用でき、穿き込んだ先が少し浮かぶようです。
LILY1ST VINTAGE(リリィファーストヴィンテージ)は10年以上前に始まった取り組みです。洋服を作るのではなく、洋服を選ぶ事を掲げています。当時現代の洋服と古い洋服の境界線を取っ払いたいと思っていた時にLILY1ST VINTAGEの志摩さんに出会いました。お互い想いをぶつけ合い、形になったLILY1ST VINTAGE。約一年ぶりの入荷です。今回はイタリアの各地を足で探し回り、集めて来て下さいました。
刺繍とも違うしプリントでもないし、ニットにこのように絵のような(絵と言ってよいのかな?)ものを描くって、よくよく考えてみるとすごく不思議で、ユニークで、面白い。Kota Gushikenのニットを知ってからもうすっかり数年経ってたくさん見てきたのに、なぜか今回の顔を見て改めてその凄さに唸った。一見すると無地のシンプルなニットの裾に、ごろんと横たわる彫刻家のブランクーシからインスピレーションを得て生まれた柄。なんとも不思議な光景で、同じように首を傾けたくなるし、忘れがたいほど印象的で、かっこいい。顔に使われている糸とボディーカラーのバランスがすごく好きで、この2色を選んだ。それと、いつも通りとても心地の良いニットです。顔はぼやりと優しいのに着ると全体をキリッと締めてくれる1着です。
たっぷりと贅沢な生地使いで丸みを帯びたコクーンシルエット。とても可動域が広くて動き易いのですが、体が入ると不思議と収まりがよく見えるコートです。今回はポリウレタンのジャガード織。凹凸による陰影とデザインの違和感が心地よく、素材がコートを引き立てているように感じます。
触り心地はカシミアのようで、着心地はジャージーのように伸縮性があり、素肌に着たいと思えるほど気持ちの良いニットです。まさかウール100%だとは思いませんでした。非対称なデザインはどの角度から見ても新鮮でした。今季のテーマOBSESSHIONでは”クラシックな形にほんの少しの違和感を与えることで、まるで新しいものに生まれ変わる。そして、『普通ではない普通』を組み合わせることで、言葉にできない心地よさが生まれる。”とありました。まさにその通り、と思ってしまうセーターでした。
ドライバーズニットというクラシックな要素とSF的でユーモアを感じると同時に、自然な柔らかさも感じる。そんな考えが右へ左へと行ったり来たりする中で、ふと我に返り、「あ、これはOMAR AFRIDIだ」と感心する。無機質で幾何学的な要素を備えながらも、生地からは柔らかく有機的な雰囲気が漂う。例えば、無機質で機能的な要素を持つ力強い服はあるし柔らかくて心地よさを持った生地を使った優しい服もある。しかし、このニットはそのどちらかに偏ることなく、両方を絶妙なバランスで併せ持っている。どちらかに思い込んで試着すると裏切りに近い感情を受ける。その異なる要素が、同じ空間に自然と収まっているのだ。そんなドライバーズニットは新しくてやっぱりSF的でユーモアがある。
前回のボタンシューズと同じマリヤムのホースレザー。履かれている方達はみなさん揃って”履き心地が良い”と言われています。なので僕自身も色違いを試してみたくなり、ダークブラウンを使ってみる事にしました。今年の冬パンツに合うブーツをイメージしていました。そのみつを訪ねると新型のボタンブーツがあり、革の表情とデザインの相性が良さそうだと思いました。足を入れて普通なら紐を結びますが、ボタンにゴムを引っ掛けていきます。慣れるととても簡単に着脱ができます。ゴムは強力で足首までしっかりと固定される為、足と靴が一体となり、一歩一歩踏み出し易いです。靴を履く時の少し異なる動作。その少しの変化が同じ時間に新鮮さを与えてくれるような感覚になりました。
この黒と素材を見た時に夜の街に溶け込むイメージが湧きました。シャツジャケットと合わせて着るとそれはなんとも快適で飲みに行く時にも良いなと思いました。主張するわけではなく、どちらかというと目立たず風景として溶け込む。よりその場面を楽しめるような気がしました。コットンネルは柔らかく少し乾いた雰囲気。ウエストはゴムと紐なので、フリーです。テーパードしたシルエットはゆとりがありながら野暮ったさがありません。