自分を甘やかしてしまうパンツがある。それがイージーパンツだ。ウエストはゆとりを持って作られていてドローコードで絞る。つまり体が大きくなっても入ってしまうのだ。コモリのドローストリングパンツは程良くテーパードが効いていて一見スラックスの様にも見える。ウエストにはドローコードと今回からゴムが入り紐を解いてずり落ちる心配が無くなった。素材はスタンドカラージャケットと同じウールフラノでセットアップで着ても決め過ぎない感じで良い。そして軽さとトロみが心地良いパンツだ。つい手に取ってしまうパンツになりそうだ。
今回のコレクションのコンセプトでもある、おお!って感覚(突然ここには無いはずのもが現れた時に感じる感覚)を同じ色、生地で表現されたのがこのニット。本来なら、裏にくる部分が表にきていたり、処理される糸がそのままになっていたりしている。花器を敢えて割り不完全な状態にして飾ったり、本来使われることのない魚を取るための籠を花器としてみたてた千利休という人がかつて日本にはいた。不完全な物を見ると違和感を感じるかもしれないけれど、同時にその美しさを感じる事はないだろうか?不完全だからこそ最終的には受け手に委ねてくれる部分が多くて、違和感を感じるからこそ好きになる事がある。要するにこのニットにはわびさびを感じるのだ。という事で、このニットは色々と違和感があり、それに気付く度にちょっとウフフってなる。そしてニットだからなのか、不完全なデザインだからなのか人の温かみの様なものを感じる。だからKota Gushikenのニットは着たくなるのかもしれない。キッドモヘアをベースにナイロンとウールで編み立てている。モヘアのフワッとした軽さが心地良く着心地も良い。光に当てると少し透けるほど薄く、中に着る物で変化を付けてみても面白い。
ボタンを開ければ2人が離れて、閉めると2人が重なる。店頭で見られた方が『ずーっと家にいて、モヤモヤしてて、このカーディガンを見て凄く刺さりました。』と仰られていた。そのカーディガンの名前がThe Social Distancing Kiss。グスタフ・クリムトの接吻という絵画を元にデザイナーが絵を描き、それをデータ化し製作されたニットカーディガン。接吻は煌びやかで色も多く、表現する事自体が大変だったのではないかと思う。そしてモヘアのシャギー感がなんとも言えない雰囲気を出している。着るだけで主役になるカーディガンなので、シャツでもカットソーでも自由に合わせて楽しんで欲しい。家でも外でも。
セットアップは持っていると非常に便利である。それぞれ単体でも使えるし、考えるのが面倒な時は合わせて着るだけで良い。COMOLIのセットアップはいつも丁度良い。若い人が着ると大人っぽく見えるし、年齢を重ねた人が着ると程良い抜けが出る。それがまた格好良くて。どの世代にもフィットするのがCOMOLIなのだ。そして気楽さもある。だから丁度良い。まだ暑い日が続くけど、これを着てどこに行こうかとかどんなコートを、靴を履こうか。そんな先の想像をするのも今の楽しみ方の1つではないだろうか。早く着たいという衝動を抑えながら。
トレンチコートに憧れる。いつか似合う人になりたいと思いながら、中々思う様にはいかない。それは年齢かもしれないし、体型かもしれない。または培ってきた人生の厚みなのか。答えが出る事は無いが、トレンチコートには何故か憧れる。seya.の新型のコートはそんなトレンチコートを原型に作られている。襟とエポレットをあえて排除しスッキリシンプルな趣である。素材にはメリノウールを使い、暖かく滑らかな表情だ。ゆったりとした作りだが、生地の重みでドレープが生まれ美しい。服自体の重みはあるが着ると全く感じない。設計が絶妙なのだ。そしてフロントが二重になっており、寒い時に留めると風の侵入を防ぐ事が出来る。開けても閉めても美しいseya.らしいトレンチコートである。
季節に関係なく、明るい色を身に付けると気分が良い。たとえ落ち込んでいたとしても楽しい気分にしてくれる。洋服とは道具であり、着る為の物だけど時に内面にも影響する不思議な力がある様に思う。年中着れる定番のETERNAL SHIRTのシーズンカラーはとても綺麗な淡いグリーン。seya.だからこそ表現できる優しい色である。冬に淡い色?と思われるかもしれないが、実は発色の良い色こそ冬にオススメだ。コートやジャケットはブラックやネイヴィ、ブラウンなど落ち着いた色が多い。全身ダークトーンになってしまうと顔写りが悪くなる場合がある。だから顔に1番近いシャツを明るくする事で印象を変える事が出来るのだ。そして着る事でシャキッとするのがseya.のシャツ。どのジャケットに、カーディガンに、コートに合わそうか考えるのも楽しい。
アルプス山脈のチロル地方にて放牧の際履いていた靴が原型と言われているチロリアンシューズ。平坦ではない道や傾斜のある所での作業に適していた事を考えるとワークウェアの1つなのかもしれない。ベルギーはアントワープのデザイナー” JAN-JAN VAN ESSCHE ”とのコラボレーションから生まれたチロリアンシューズ。オイルをたっぷり含んだホースレザーを表裏で使っている。グリップ力のある吸盤状のビブラムソールで地面が濡れていても安心。着脱可能なカップインソールはフカフカでスニーカーの様な履き心地だが、取り外すと革靴らしい履き心地になる。(サイズ感の調整やお好みで)茶色の革は楽しい。洋服の色をあまり気にせず履けて合わせ易い。そして使い込んだ際にわかる色艶の変化の幅が広い。革の色が明るくなればなるほどそれが顕著に現れる。だから茶色の革は楽しいのだ。
1950年代、フランスのハンティング用のブルゾン。使い込まれてフェードした色がとても美しいブラウンキャンバス素材。元々の色は襟裏の色に近かったのではと想像している。イチから着込んで楽しめる経年変化も良い、しかし70年使い続ける事は中々出来ない。だからこそ70年目から始めてみるのもアリなのではないだろうか、と思えてしまう程雰囲気のある洋服である。そして少し珍しいフロントダブルジップ仕様だ。(ずっとシングルジップだと思っていたが、試着されたお客様がダブルである事を発見。引き手が無い仕様だったので全く気付かなかった。)背面にはゲームポケットがある。ポケットの付いている位置が通常よりも上目に付いている気がした。そのバランスを見ると、少し細身な人の方がサイズ感として合う様に感じる。肩周りはコンパクトでスッキリしているが、脇のピボットスリーブのお陰で運動量は確保されていて細部までとても考えられて作られている。中間着に分類される洋服は日本の気候にもある意味適している。春と秋には羽織って、冬はコートの下に。生地もまだしっかりしているので、永く着用出来るのも嬉しい。そんなこの洋服を70年目から紡いでいく事も楽しんで欲しい。
よし、今日は少し気合いを入れよう。そんな時はseya.のシャツをよく手に取る。袖を通すだけで背筋が伸びる様な気がするからだ。今日は少し疲れているからラフにいこう。そんな時にもseya.のシャツを着る。砕けた格好の時にも程良くキッチリした感じが出せるからだ。細番手の糸を高密度に織り上げたMICRO BRUSHED COTTON。ハリがあって滑らかな肌触り。素肌に気持ちの良い素材。縫製はとても美しく、肩や襟付けなど部分的に手縫いで仕立てられている。カフスの裾部分は切りっぱなしに見間違えるほどキワキワに縫われていて初めて見た時はビックリした。瀬谷さんの作るシャツは凛としながらも優しい。自分自身に合わせてくれている、そんなシャツだと思っている。