冬の楽しみの一つはコートが着れるという事。ウールやカシミアなど冬の素材を見るとこの季節にしか着れないという所から特別な気分になれる。このコートを見た時はまだ暑かったけどテンションが凄く上がっていた。80年代にジョルジュ・レッシュが手掛けたツイードコート。とても分厚い生地だが着ると軽くて柔らかく、動き易さに驚かされた。生地も良く仕立ても良い。とても手間を掛けて作られたコートなのだと伝わってくる。そんな手間暇掛けて作られたコートが40年も未使用でここにある。それはそれで面白い縁だと思った。
オマールのバルマカーンコートはイタリアはロロ・ピアーナ社のCLIMA SYSTEMという熱の伝導率が非常に高く自身の体温によって均一に温まる生地。さらに風や雨を通さず、透湿性にも優れている。だから薄くても暖かくとても軽い着心地だ。見た目はクラシックなウールコート。しかし、止水ジップやスナップボタンなど、素材とのバランスの良いデザイン、実はとても都会的なコートでもある。コートは羽織るモノだが、脱いで手に持つ事が案外多い。このコートはその手に持った様がとても格好良くて、自信を持ってどこにでも着て(持って)行けると思う。そして天候を気にせず使えるコートは持っていると本当に便利だ。
以前パリのパサージュを歩いていると、ガラス越しにストールがツラツラと並べられていたのを見た。まだオープンはしていなかったので、ガラス越しに額をつけて覗いた。そこでsuzusanという名前を初めて知る事になった。その時は日本で作られているとは知らず、美しい色と心地良さそうな生地に、ただただ吸い込まれた感じだったのを覚えている。
カシミアに包まれる心地よさを知ってしまうと、寒くなる事が楽しみになっている。体の芯からジワッと温まるあの感覚、素肌の上から着たくなる程の柔らかさ。クセになってしまう素材である。今までローゲージやミドルくらいの物をご提案してきたが、今年は少し薄手で体にフィットし、ジャケットやコートが着やすい物を探していた。それもカーディガンだと尚更良し。そして見つけたのがsuzusanのサイドシームのないカシミアカーディガン。内モンゴル産の上質なカシミア。偶然が重なり、毛玉の出にくい生地になったそう。染めはマダラ絞り。写真ではマスタードイエローが割とハッキリ写っているが、実際はもう少しブラウンと馴染んでおり、とても上品な印象だ。どうしても染めに目がいくが、素材や作りも本当に素晴らしい。
LE TINGSとAndrew Ibiのコラボレーションスウェット。スパイクリー監督の映画のオマージュ。1つ1つ手書きで、アートピースな1着です。昔話で申し訳ないのだが、CDのジャケ買いとかそういう言葉がありました。なんとなく”イカすな!”で買って、気に入ればそっから深掘りした。それで、学校では習うことのない文化だったり歴史だったり背景だったりを学ぶ事もあった。そんな感じでこのスウェットを手に取ってから知る事があって何か感じたり、そこから夢だったり憧れだったり希望だったりが生まれれば最高だなと思う。それと、このスウェットすごく温かくて心地良い。プリントTだったりイラストのスウェットだったりは探すと無い事が多く、よい生地とアーティスティックな雰囲気がとても上品だ。
私達はニットが好きだ。特に秋冬はお店の中がアウターよりもニットだらけになる事が多い。素材やデザイン、編み方など特徴が沢山で見ていても面白く、実際に着るとじんわりと暖かく冬を実感できるからだ。オマールのニットはコットン。スウェットやロンTに近い感覚で着れる。畔編みのシンプルなクルーネックに胸から右腕に掛けて伸びる前立ての様な、違和感が面白いデザイン。これはカーディガンをずらした様なイメージなのかな?軍物のセーターの様にも見える。見る視点や感じ方、人それぞれの捉え方で着て楽しんで欲しいと思ったIMMERSION KNIT。
生地がどうとかデザインがどうとかそういうのも大切で興味深い内容だけれども、今回は置いておく。初めて見た時にそういうのを考えたり聞いたりする前にパッと目に入ってきて脳裏に焼き付いたのがこのブルゾン。色合い、かわいい。デザイン、かわいい。着る。かわいい。ずっとかわいい。って言い続けでした。ZIPのブルゾンはカジュアルな雰囲気もあり古着のスラックスと合わせると良い塩梅で濁してくれる。男っぽくっとかそういうのが強すぎる時がある。それも濁してくれる。カジュアルになり過ぎるとちょっと子供っぽく見えてしまう時に質のよいニットなんかはピリッとした感じも出してくれる。きっと価値を自分で高めた物というのは着ていて自信が出るので、堂々とする。70代の男性がピンク好きでね、でも似合う様になったのは白髪が増えてからだと言ってガハハと笑った。なんとも大人だった。
田んぼや山の間を車で走り、なんと素晴らしい景色なんだろうと眺めていた次の日、夕暮れにビルと空のコントラストを見上げてこの都会の空も嫌いじゃない。と思う。その景色の様な絞り柄のカットソー。程よい厚さのメリノウール。上品なウールの光沢感があり、秋は1枚でカジュアルなパンツと合わせたい。ヴィンテージのコートの中に合わせても調和してくれて良い。という感じに今まで着ていた洋服に合わせると、自分の歳に追いついてくれる。suzusanの染めが作り出す世界は素晴らしいけれども、生地も本当に、最高に素晴らしい。
長い長い年月を掛けて大切に使われてきた物は必ずと言って良い程、初めよりも良い顔をしている。雨や風、日光に晒され、何度も洗い、色は褐色し、生地の硬さは完全に無くなり滑らかさが際立っている。破れたり薄くなってきたら補修する。イチからこのコートの様に育てたいとも思うけど、途方もない事だ。それはきっと自分が年老いた時に結果としてそうなっているのだろう。
自然に馴染ませる。比較的新しい2000年代のフランス軍、雪山にカモフラージュさせるためのブルゾンのデッドストック。潔い程に白く、その白さを見て今年の冬はこのブルゾンを着たいと思った。素材はゴアテックス、風よけのハイネックやフード、首周りのドローコード、フロントは三重構造など十分過ぎる機能性を持っている。同色系やアースカラーと合わせて、もしくは対極な色と組み合わせたり。冬に白いアウターを着る事はあまり無かったのでとても新鮮な気分になれた。
古き良き、という言葉がとても似合うアイリッシュツイード。手紡ぎ、手織りが行われていた時代にアイルランドで仕立てられたノーフォークジャケット。毛足の長い上質な羊毛、色彩豊かなネップの表情が美しい。エルボーパッチやマチ付きポケットなど、狩猟ウェアとしての機能美が現代においての実用やファッションとしてもスーッと馴染んでくれるような気がします。